その1とその2を合体しました。
投稿者 ジェイ 2016年2月20日
この本によると、小保方さんが作製に成功したのは細胞の多能性を示唆する(1)「Oct4陽性細胞」でした。これはiPS細胞やES細胞といった「多能性 幹細胞」とは全く違います。これらの細胞は、「培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化し、ほぼ無限に増殖する能力をもつ」のですが、小保方 さんが最初に作製した「Oct4陽性細胞」は、万能性を完全に証明したものでもなく、また増殖する能力もありませんでした。
これをマウスの卵に注入し、キ メラマウスを作ることで万能性が証明でき、また培養液の中で増殖することも証明できたものを(2)「STAP幹細胞」と呼びますが、この作製に成功したの は若山さんだけだったようです。小保方さんにはキメラマウスは作成できなかった。小保方さんは若山さんにその作り方を訊ねたが、彼は教えてくれなかった (92P)。この状況は、後の検証実験のときでも同様でした。
しかし、笹井さんは、後にこの(1)「Oct4陽性細胞」を「STAP細胞」と名 付けてしまった(113P)。その結果、世間は(1)と(2)を完全に同一視してしまい、小保方さんが(2)「STAP幹細胞」も再現できると勝手に思い 込んでしまいました。ここから混乱が生じているわけです。
2014年夏の理化学研究所の検証実験では、小保方さんは(1)は再現したが、(2)は再現できませんでした。(220P)それはそうでしょう。彼女は一度も(2)の作成に成功してないし、「成功した」とされる若山さんはそのやり方を教えてくれなかったのだから。
このことをもって彼女を非難するのはおかしいですね。
以上のことから、もう一度問題の2014年4月9日の記者会見の発言記録を読むと、小保方さんの発言と世間の受け取り方にすれ違いがあったことが分かります。(以下、一部引用)
記者 今回の騒動は、小保方さんしかSTAP細胞の作成に成功されていない、というのが混乱の一因だと思うのですが、ご自身がSTAP細胞を何回作成したのかと、作成のコツについて何かあれば教えてください。
小 保方 まずSTAP細胞(←(1)のことですね)については、私自身、すでに200回以上作成に成功しています。STAP幹細胞(←(2)ですね)につい ては、コンバージョンが私は苦手としていて、若山先生(山梨大教授)がお得意としていて、現存するSTAP幹細胞は全て若山先生が樹立してくださったもの なんですけれども。実は今回の論文(←(1)についてですね)は、私の中では現象論を記述したものであって、最適条件を証明したもの(←(2)についてで すね)ではないという認識でした。そしてそれから、まさにSTAP現象の最適条件を示すような論文、メカニズムに迫りつつ、そして最適条件を示していける ような論文をまさに準備しようとしているところだったんですけれども、このような騒動になり研究が止まってしまったことに本当に心を痛めております。
(中略)
記者 改めて、小保方さんの口から聞かせてください。STAP細胞は有るんでしょうか、ないんでしょうか。
小保方 STAP細胞はあります。(←(1)のことですね)
・・・ということでこの引用した部分では彼女は基本的に嘘はついてないと思われます。
さて、次に理研の検証実験について見てみます。
STAP問題の中で国民の最大の関心事の1つは「小保方さんが発見したSTAP現象(Oct4陽性細胞の出 現)は本当にあったのか、なかったのか?」という点でした。この点が様々な疑惑で曖昧になってきたので、理化学研究所は2014年の夏から冬にかけて検証 実験を行いました。
もちろん実験者の持ち物の管理などを厳重に行って、ES細胞が絶対に混入しない環境下においてです。
その結果、理研は12月の最終報告で「STAP現象は再現できませんでした。」という結論を発表しています。ところがこの本の238Pには、次のような記述があります。
実 際には私が行った検証実験においても、丹羽先生のところで独立して行われた検証実験でも「体細胞が多能性マーカーを発現する細胞に変化する現象」は間違い なく確認されていた。私が発見した未知の現象は間違いがないものであったし、若山研で私が担当した実験部分の「STAP現象」の再現性は確認されていた。
これはおかしいですね。理研の発表と異なる見解なので、改めて理研HPで最終報告のPDFを見てみると、丹羽教授の実験結果の報告の中に次のような記述が見られます。
<STAP現象の検証結果>
[…]
3 多能性細胞特異的分子マーカーによる多能性誘導の検証
肝 臓由来の細胞をATP 処理して得られたSTAP 様細胞塊について、多能性細胞特異的分子マーカーの発現を、定量PCR 法と免疫染色法により検討した。培養した細胞集団全体から抽出したRNA を用いた検討では、Oct3/4 などの多能性細胞特異的分子マーカー遺伝子の発現を検出することは困難であった。そこで、STAP 様細胞塊を一つ一つ単離し、そこからRNA を抽出して、定量PCR
法による多能性細胞特異的分子マーカー遺伝子の発現を検討した。この結果、3 回の独立の実験において、解析したSTAP 様細胞塊の17%において、ES 細胞における発現量の10%以上のOct3/4 の発現を検出した。
一 方、免疫染色法によるOct3/4 タンパク質の発現の検討では、9 回の独立の実験を行ったところ、5 回で明らかなOct3/4 陽性細胞を含むSTAP 様細胞塊を同定した。これらの結果から、肝臓由来の細胞をATP 処理して得られたSTAP 様細胞塊においては、少数ではあるものの、Oct3/4 を有意に発現する細胞が含まれていると結論した。(←ここまで引用)
この最後の「少数ではあるものの、Oct3/4 を有意に発現する細胞が含まれていると結論した。」というのは、つまり成功したということです。
「有意」というのはそういう意味ですよね?
そしてこれは、「あの日」219Pの記述にある、
『7月中旬ごろ、丹羽先生のところで独立して行われた検証実験で「肝臓から細胞を採取してATPで酸処理した細胞塊からESと同等なくらいの多能性遺伝子の遺伝子発現が確認されるようになった」と丹羽先生から報告を受けた。』
という記述とよく符合します。
前述のように、小保方さんの主たる研究は多能性を有する可能性を持つ細胞(これを『STAP細胞』と呼んだ)の作成までで、これを「STAP幹細胞」に仕立て上げたのは若山さんだったので、この段階で、小保方さんが担当した部分の検証実験は成功したと思われます。
ところが、この丹羽教授の検証実験の「帰結」部分を読むと、こう書いてあります。
『Oct-GFP を導入した新生児脾臓、肝臓からのGFP 陽性細胞の出現頻度は低く、再現性をもって、これらの細胞の多能性獲得、未分化性を分子マーカーの発現によって確認することは出来なかった。』(←ここまで引用)
要するに実験は失敗だったと言っているようです。しかしそのすぐ前に「有意に発現する細胞が含まれていると結論した。」と書かれているので、これは矛盾した結論のように思えます。
これは一体どういうことなのでしょうか?私には丹羽教授の実験は、小保方さんの言う「STAP現象(Oct4陽性細胞の出現)」を支持しているように思われるのですが。
