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投稿者:白鳥泥水 投稿日 2016/4/24

一般読者で、小保方晴子著『あの日』を読んでいる人が、事実関係を中心に理解を整理するのに大変役立つ。自分でノートを作り、理研の報告書や過去の報道など全部目に通す余裕など一般人はないからである。小保方さんに申し訳ないが『あの日』を読んでいなくても、『あの日』の事実関係についてはよくわかる。『あの日』よりわかりやすいかも。『あの日』の科学生物学用語で撃沈した人には特におすすめである。またほぼ同時に進んでネット情報を全く知らない人にもおすすめである。おぞましいくらいである。小保方さん、丹羽氏、なんと若山氏もSTAP細胞がある実験をした報告をしており、若山研研究員のほとんどが、STAP現象の再現を経験している。だからポジティブには「ある」ことを受け入れて何の問題もない。さらに笹井氏や丹羽氏は、ネガティブに、論理的に少なくとも新規な現象としてSTAP細胞があることを否定できないと科学的説明している。これらは比較的よく知られており、だから「ある」のだ。それ以上でも以下でもない。

STAP細胞はなく、ES細胞だというのは遠藤高帆、若山照彦の二大巨匠の初期の拙劣なSTAP否定論を吟味せず、単に「印象操作社会」で、「固定観念」化したものであり、検証に耐えるものではない。

問題はアーティクル(ファーストオーサー小保方氏、ラストオーサー・ヴァカンティ氏、STAP細胞の現象論)の疑義は、画像の取り違え(ネイチャーに修正済み)と、若山氏の指示による図表の操作(裏付けのデータがある)以外、問題がないのでやはり現象はあるのである。

撤回は、単に若山氏が小保方氏のマウスが自分のものではないという一方的主張によるものだが、その主張が否定された後、他の著者の署名入りのネイチャーへの撤回報告書を、若山氏が勝手に書き換え(若山氏のものだったため、支離滅裂な文章になっているそうだ)、何の説明もその後行われなかった。

つまり、撤回はされたが、撤回は必要がなかったということだ。

一般読者がわからないのは、現象論と多能性、STAP細胞とSTAP幹細胞、GFP4マーカー発現とキメラマウス、アーティクルとレターの区別である。それぞれ前者が小保方氏の担当で、後者が若山氏の担当である。さらに強調されてこなかったのは研究室では、監督者が絶対であり、他の研究者はほぼ奴隷に等しいという体制である。なので若山研時代の小保方氏は、主人に対する奴隷の関係にある。主人の幹細胞樹立のため、STAP細胞隗をせっせと作り続けたのが小保方氏である。効率の点で小保方氏に代わるものが出なかったのがいいことか悪いことか知らないが、マンネリ・クローン・マウス実験しかできない若山氏に、ノーベル賞も夢でない材料をもって奴隷がのこのこ転がり込んできたのである。

若山氏の態度の悪さは、小保方氏に批判的な人でもたいてい認めていることである。
どうしてそんなに態度が悪くて平然としていられるかというと、そのような奴隷制度の頂点にいることをほぼ日本の科学者コミュニティ=文科省が公認しているからである。こういう地位は強い。これはコミュニティなのではく、日本の場合官僚制にしか過ぎないのである。

もっとわかりにくいのは、二つの論文のボスはアーティクルがヴァカンティ氏であり、レターが若山氏である。小保方氏は主要な研究員でしかないが、論文の執筆は小保方氏が行っているというからわかりにくい。ヴァカンティ氏はアメリカにおり、若山氏は「英語の読み書きが不自由」だからだ。そして中核のSTAP細胞の現象の発見と実験者は小保方氏であるが、それはヴァカンティ氏の課題の一部として生まれ、若山氏の管理下で、その多能性の証明の傍らで、STAP細胞の作製提供を若山研でやっていたということである。

つまり、プロジェクト全体で、新規で中核的なアイディアと実験は小保方氏のものだが、それに対応する特別な地位があったわけではないのである。

そういうわけで、そのことだけでも小保方さんに対するバッシングが的外れであるのは間違いない。

STAP細胞実験のイメージで言うと、細胞が死ぬ寸前の特異なある条件下で、生き残るものが幹細胞の形で現れるということである。細胞膜の破損、ミトコンドリアのエネルギーとか、ATPのエネルギー補充効果などが関連するとみられている。そういうことを研究するのが「科学」である。

広義の概念として、損傷した細胞から幹細胞(未分化な細胞・多能性や分化の能力は不定)が生まれることは、STAP細胞隣接現象であるといって構わない(この広義の概念のSTAP現象は)。ヴァカンティ研時代、膨大な試行錯誤の中からより効率の高いプロトコルを探求したことが『あの日』で書かれている。植物ではあり、低級動物でもある。高等動物でないのは、遺伝的発達の複雑さの程度が増すからであろう。このメカニズムは実際には、タンパク質などの生成によって細胞の分化が固定される物理化学的メカニズムであるはずである。これを決定論的メカニズムと考えるイデオロギーにとって、細胞生物学の歴史を愚弄するものと、見られたということである。ある種の遺伝子万能崇拝が生物学に蔓延していることを示唆する。最終的に、広くSTAP細胞はES細胞であるかもしれないという結論に導いた桂報告も、遺伝子的決定論に依存している。

ES細胞説はどうなのか?これを渋谷氏は、そもそも若山氏と遠藤佳帆氏の思い込みに端を発するストーリーであり、桂報告書という最終的な報告書でも「曖昧」であるから「わからない」ということだ(最悪、クローンの系統の管理ができてない若山研のマウスのずさんさの問題や、同じ遺伝的背景をもつクローンどうしでSTAP細胞も、ES細胞も作られていてもわからないから、ES細胞と証明されてもSTAP細胞が否定されてはいないとか、重箱の隅をつつくような議論はネットでまだ続いている)。いずれにせよかなり消極的な証明であるし、排他的ではないので、朝日新聞の書評で語られるように、STAP細胞はES細胞だということが科学的に証明されているというのは「誤り」である。そうすることによって朝日新聞の『あの日』の書評が支離滅裂になるのである。STAP細胞の可能性を認めるだけでその支離滅裂さ加減はなくなる。

この本によって明らかになったことは、『あの日』の記述は正確に、各種報告書や記事に批判的に応答しており、文才余りある小保方氏の単なる文芸作品ではなく、事実問題として正しく読めるということである。朝日新聞の書評子などは本書を片手に、もう一度『あの日』を再読すべきである。

さて、この騒動でネットが重大な役割を果たしたかのように思われているが、渋谷は完全にではない、アメリカのPubPeerではポール・ノフラーの、日本の場合は、遠藤高帆や理研内のグループの組織的な事前のリークに基づくものだと推定している。それは肝心のネット査読をするにはあまりに時間が速いからだ。ノフラーの場合は発表から9時間で画像疑惑を指摘している。それは、2014年1月28の記者会見以前に、これらの中核グループのリークと分析が始められていたことを示唆する。そのグループの活動が事件の組織的部分と断定できる。分子生物学会や一部の科学ジャーナリストがネットの匿名情報にお墨付きを与えた。ここまでは悪意がある、集団的計画的な行動だろう。しかし同一の動機かどうかはわからないことを渋谷氏は示唆する。

しかし、その他、安倍政権主導のリケジョブームに対するアンビバレンツ、先端研究機関をめぐる駆け引き、万能細胞の競合グループ、そしてネットと融合した理想的スキャンダル報道を行ったマスコミその他のアドホックな事情がからんで騒動は広がり、最もゲスなレベルでNHKスペシャルの人権蹂躙番組や須田桃子著書大宅賞受賞(渋谷氏は受賞ありきで検証実験・最終報告を待たずに出版を指摘している)となって、世論の求める決着へと促された。

だが地球は回っているのである。

これらの騒音が鳴りやんだ時、存在するのは、死を逃れ生き残ろうとする細胞の最適条件をもとめる小保方さんの原風景であり、騒動を経て『あの日』を問うて、再起を図ろうとする小保方氏の決意であり、それを擁護しようとする渋谷一郎さんの真摯な行動である。これらをすべて支持したい。

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